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遊楽日記
焦らず気負わず気ままに迷走中 
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徘徊 


エリックのss。季節は夏、らしい。

(2008年)

 

台風一過の真昼間。一番太陽のキツイ時間。
太陽は鬱陶しいくらいに明るく、空は偽物じみた青さを広げ、足下のアスファルトと身を包む風は茹だる熱を孕んでいて、そんな季節先取りの暑さにやられたのか自分の体は僅かに重く感じる。
今日の、ヘッドフォンから流れ込む音圧を透かして見る世界はそんな感じだった。
今は疾走感だけで作りあげたような電気的な曲が再生されている。こんな茹だる夏とは全くそぐわない明るい雰囲気だが、わざわざ変える気力がない。
エリックは靴裏を削るだらしない歩き方をしながら、煩いな、と他人事のように思う。
『ダメだ、すげぇ下手だこのバンド』
曲が煩すぎて独り言は自分の耳にも聞こえない。
つい、言ったかな、言ったよな、とどうでもいい自問をする。しながら、
『…後でぜってぇ消してやろ。消して別の探すか。でも今あんま聴きてぇバンド無いよなー。コレの他のアルバムと曲に期待すっかなー。でもやっぱ無理かも』
だらだらとやる気のない独り言を吐き捨てて行く。目的の無い徘徊だ。何でもいい。
ぽんと右の肩に微かな震動が来た。僅かに首を傾けながら見れば、オレンジカラーのバッキーが短い腕で骨ばった肩先の肌を細かく連打している。エリックは怠惰な歩きを止めた。
『ローラ』
バッキー、視線に気付いたローラは、連打を止め剥き出しのタンクトップの肩紐を口で引いた。それは更に右の方向へで、そちらにあるのは、
『道路の下。あぁあぁ、日陰歩けって?…そっかそっか、死ぬほど太陽強ぇーし』
…ヤベぇな。エリックはぼんやりと思う。
高架下のすぐ横を歩いていることに気付かなかった。日陰に避難することを考えもしなかった。
それに気が付いてみればここがどこかも判らず、
『…でもまぁいーや!』
どうせ誰も居ない。どうでもいい。自棄のように声を出して、日陰に入った。


Fin.
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