(来栖香介の住居。マンションの高層階、職業柄防音性の優れた一室。今現在、特に音はない)
来栖香介:(黒い革張りのソファに寝転がり白いカードを翳している。)
来栖:ちっ、どうすっかな…
(玄関にて鍵の開く音。扉の開閉音。)
萩堂天祢:(手に白いビニル袋と黒いカバンを下げている)
今晩は。…来栖さん、ちゃんとご飯食べました?
来栖:…食ってねぇ。(気のない返事。白いカードを凝視したまま)
萩堂:じゃ、お腹空いたでしょう。…ちゃんと食べないと身体壊しますよ?今何か作りますから。
来栖:…ん…
萩堂:そういえば、何ですか?そのカード。
(萩堂の位置から見えるのは、ソファの背とむき出しの腕に掲げられた白いカード)
来栖:招待状。
萩堂:…もう少し詳しく。
来栖:あー…銀幕ベイサイドホテルで、ダンスパーティやんだと。広場でロイに押しつけられた。
萩堂:へぇ…ダンスパーティですか。いつです?
来栖:明日。
萩堂:明日!?
来栖:なんか、大物女優だかなんだかが突然来日したとかで…
・・・急いで歓迎ダンスパーティ準備した、らしいぜ。
萩堂:はあ…それは大変忙しいでしょうね。それで、来栖さんはどうするんです?
あまり、そういうのは好きではないでしょう。
来栖:んー…行く。
萩堂:…珍しい。
来栖:んだよ、俺が行っちゃおかしいってのか?(顔をしかめ腕を降ろす)
萩堂:いえ、…でも私、いつも苦労してますから(笑)
あ、じゃあタキシード出しておきますね?
来栖:……悪かったな。
萩堂:はい?
来栖:べつにー
萩堂:(くすりと笑み)そうですか。…あ、最新の銀幕ジャーナル…読みます?
来栖:…ん…え!?(びくっとして顔色が変わり上体を跳ね上げる)
来栖:…っと、貸せッ!(ソファの背から乗り出して手を伸ばす)
萩堂:え?…はい、どうぞ?(きょとん、とした表情で雑誌を手渡す)
来栖:(奪い取ってざっとめくりはっきりと青ざめる)…くそ…っやっぱ載ってやがった…ッ
萩堂:・・・あの。どうかしました?
来栖:別に!・・・なぁまさか萩堂、・・・読んでねぇよな、これ?(引き攣った表情)
萩堂:・・・あまり時間が取れませんでしたから・・・
来栖:・・・絶対に、読むな!何があっても絶ッッ対に読むな!(必死)
萩堂:はあ。
来栖:読むなよ!?ちくしょ。(リビングから自室へ駆け込むように移動)
萩堂:必死ですね・・・さて、食事と服でも・・・ぷっ(耐え切れなくなったように吹いた)
ENDッ!
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