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遊楽日記
焦らず気負わず気ままに迷走中 
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   そのゆめ、かなえてあげる



―――明け方に何か、夢を見た。


 




眩しい。

ちらちらと瞼を通して無理やり光が入りこんでくる。

夢のせいというよりはそのしつこい光のせいで、来栖香介の目は覚めた。

わずらわしげに光から顔を背け、ぼんやりと目を開ける。
始めに目に入ったのは枕にしていた自分の黒い腕と、簡素なプレハブで覆われた薄汚れた壁。
中途半端に残る疲れから億劫そうに身体をおこし、ふてくされた顔で光の方角を見た。

…そこ、思いきり手を伸ばせば届きそうな位置に、何かがいた。

存分に降り注ぐ真夏の日の光を反射し白く輝く丸い塊。

「…?なんだ……?」
訝しげに目を眇め、寝起きの掠れた声で呟く。

…ただの野良猫だろうか。だが、質感といい尻尾の形といい、どうにも違う気がするのだが。

日が翳った。眩しさが収まり、通路の端に泰然と佇む生き物の形がよく見えるようになる。
そいつは、TVや写真で何度か見かけた、バクに似ていた。

「…何でこんなところに…」

その白いモノは、すぐ近くの来栖に欠片も興味を示さず一心に下を凝視しているようだ。
 
「……?」
何となく興味を惹かれ、ふらりと身を傾けその脇に手を付き階下を覗き込む。
白い不思議生物はその時だけやたら鋭い目でちらりとこちらを見上げたが、すぐに目線を下に戻す。
目に落ちてきた長髪、仕事からここに直行したせいで銀色のそれをかきあげ片手でまとめると、…見えた。



それはまるであらゆる映画のワンシーンを切り取ったようだった。




『お前たち、何をしているっ!』
  『金だ!さっさと金を寄こせ!』
『お前、何なんだ!?』
  『それはこっちの台詞だ!僕のバイク何処へやった!?』
 『金を持ってくるのはてめぇらの役目だろうがァ!?』
   『一体何の話だ!?』
『本部、本部応答して下さいッ!』

 『ちくしょ、何がどうなってやがる!』


この騒ぎに気がつかなかった自分が不思議でならないほどの音量で、わあんと広い倉庫に音が反響する。


黒服の男たち。緊迫する空気。丁々発止の声と声。
サムライが居る。ヤクザがいる。中華系のマフィアっぽい奴達が居る。
…もしかして、あの赤いヘルメットに全身タイツのアレは戦隊ヒーローなのだろうか。

「……なんだ、これ?」
半分呆れ、半分戸惑ったような声がでた。
一晩寝ていたうちに、ここは映画撮影のセットになってしまったのだろうか。寝る前までは単なる使われない倉庫のはずだったのに。この「日本のハリウッド」銀幕市なら、そう言うこともあるのかもしれない。しかし…
 
「まったく筋がわかんねぇ。」
これで上手くいけばとても面白い映画になるのかもしれないが、この混沌とした様子からすると期待できそうにない。それに、監督も撮影スタッフも居ない撮影なんてないだろう。
…何かがおかしかった。

「なぁ、これ…」
問いかけるように手元を見れば、そこに居たはずの白い何かは姿を消している。
身体を起こし、左右を見渡した。強い光影の中、まるで幽霊にでも化かされたように、見落とすとも思えないあの白い姿は跡形もない。
「何なんだよ…」


「―――そこで何をしている!?」

と、階下に動き。
見下ろせば、下の映画スターがこちらを指差し何事か喚いている。役柄は恐らくチャイニーズマフィア。
「…あ?」
来栖は眉根を寄せた。
自分の中国語のヒアリングは確かではないが、不思議と言葉の意味はわかる。
どうやら先ほどの不思議生物と同じことをしたらしい、と光を反射する銀の髪を抑えたまま未だ寝惚けた頭で理解するまで数秒。
 
その間に下の全ての注目を集め、そして、




「もう何がどうなってんだ貴様も奴らの手の者か!?」




その手に持った黒い影の先端がこちらを向いた。

 










―――銃声。





 






---------------------------?




「来栖さんッ!」


突然強く腕を掴まれた。


「―――ッやっと見つけましたよっ!…どこで何してたんですか!?」

聞き慣れた声だ。
来栖は邪険に腕を振り払うと、不愉快な思いを隠さず振りむく。

いつもより人通りの多い銀幕広場の雑踏。
先程森やら何やらが出現していたらしいそこでなくても、その日の街は何処へ行ってもとんでもなく騒がしい。
悲鳴や疑問や歓声。叫び声や笑い声。爆発音に、まるで映画のような特殊効果付きの魔法。
朝、あの白い不思議生物(どうやらバッキーというらしい)を見た瞬間からだ。香介の世界は変わり続け、ひとつひとつを味わう間もなく狂騒は廻り続けている。
―――それはまるで、夢の中に居るように。


「携帯、電源、…入れといて下さいと、あれほどっ!――銀幕市中探し回ったんですよっ!」

萩堂天祢は、振り払われた腕をそのまま膝に付き荒い息の挟間に非難を絞り出した。
余程走り回ったのかスーツに皺がよっていた。いつもは軽く整えている茶がかかった髪はほつれて目にかかっている。
もういい年のはずだが、三年前初めて会ったときから二十歳前半にも見える若い容姿は変わらない。
その粗く息をつく肩に、青いバッキーがしがみついているのだけが昨日とは違った。

「知るか。」
ふいと顔を背けた。電源を入れると掛かってくるのはほとんど必ず小言めいた文句だ。
そんなものを聞いて喜ぶ趣味もないので、大抵電源を切っている。

「それじゃ持ってる意味ないですよね!?」

声をあげる萩堂を黙殺する。
ふいと背けた視線の先にあるのは、不思議が溢れ出した町だ。
既に夕闇の迫る町並みは、混乱も落ち着いてきた様子だった。
先程、映画実体化問題対策課というのが設置されたらしいと聞いた。
香介は萩堂の文句を聞き流しながら、ぼんやりと一度覗きに行ってみるのもいいかもしれないと考えている。

「?来栖さん。その怪我、どうしたんですか?」
突然消えてだの、心配しただのの小言をやめふと萩堂が手を伸ばした。
背けた香介の頬に一筋の傷がある。

「あ?ああ、これか。……朝、ちょっとな。」
香介は小さく口の端を歪めて笑った。よく見れば、彼の好んで着るコートのあちこちに小さな傷や汚れがある。

「…何して来たんですか?」
萩堂は声を抑えて聞いた。それは明らかに喧嘩のあとに見えて、そして年若い音楽家はどこか満足げだ。
彼には困った悪癖があることを萩堂は知っている。
「……別に?ちょっと遊んできただけだ」
香介は誤魔化すように言う。
昨夜突然着替えもせずにコートだけ持って消え、約一日ぶりに捕まえたと思えばこれだ。
「…はは」
…笑い出したくなるほど彼はいつも通りだ。この半日に何があったにしろ、この街がこうなった今無事を確認できただけで良い。怒るより先に安堵で座り込みそうになりながら、萩堂は気の抜けた笑みを漏らしていた。

「…何笑ってんだよ?」
気づけば不審そうに見られていた。
「いえ、何でも。…ああ、昨日夜ちゃんと食べたんですか?あと暖かくして寝ましたか。夏とはいえ油断してると風邪引きますよ?」
「………は?」
いきなり話がスライドした。自分が言うのも何だが他にする話があるんじゃないか、と思う。
というかお前は俺の母親か。 最近、その種の理解しがたい言動が増えている気がする。最初からこんな奴だったろうか。三年越しのパートナーだが、奇妙なものを見るような目でまじまじと見てしまった。
「あと…。?何か?」
並べ立てていた注意をやめ、萩堂はいやに嬉しげに見返した。
「…つき合ってらんねぇ。」
ぼそりと呟いて再び歩き出す。
行先は自分のマンション。わざわざ捕まるまでもなく、一度帰るつもりだったのだ。
慣れているのだろう、苦笑一つで萩堂は横に並んだ。キュイ、と肩で青い小動物が鳴く。
その鳴き声に、ふと聞いた。
「…それ」
「はい?」
「さっきから肩に乗せてるそれだ。どうすんだ?」
青と白の小さな生き物。起き抜けに倉庫で、そして帰りがけに散々見かけたバッキーとかいう不思議小動物。
「知りませんか?バッキーです。朝、気がついたら家の中に居て。」
萩堂はなんだか嬉しそうに不思議小生物の背を撫でた。動物は、キュイキュイと気持ちよさそうな声をだして手に身体を擦り付ける。
…つまり、飼う気なのか。
「餌どうすんだよ。食わせられんの?」
「はい?餌って夜見る夢ですよね?それくらいなら。…グーリィって名前付けたんです。仲良くしてあげて下さいね。」
ね?と微笑みつつ告げた仕草を真似してか、タイミングを合わせて青い不思議生物が同じ仕草。
人獣そろって小首をかしげる姿が妙にハマっていた。

「………。まぁ、勝手にすれば?」
何となくジト目をやり、興味を失ったように再び前を向く。
「はい。…そういえば、来栖さんのバッキーは?」
ふと、という感覚で萩堂が聞いた。
「私より映画好きですよね?」
「ん?ああ、――捨ててきた。」

「…は?」萩堂は思わず足を止めた。

「ムカつくから蹴り捨ててきた。…アイツ、俺の獲物喰いやがって。」
…捨ててきたって。若き音楽家は不機嫌そうにぶつくさと呟いている。

「…捨ててきた?」
萩堂は唖然と、肩のグーリィと目を合わせた。

「キュイ」
問いかけるように青いバッキーは鳴き、萩堂は慌てて先へ行く彼を追いかける。


 






 to be continued?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

続くのかどうなのか。ちなみにルシフはまだ名前さえ付いていないという。

…しかし改めて読むと、香ちゃんツッコミ所多い行動してる気がしてならないような。
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